結局、悩んだ末俺は急いで仕事を片付けてプレイルームへ行った。

ナースステーションの看護師さんに声をかけて、プレイルームから1冊本を借りる。

どれがいいか悩んだ挙句、俺も昔読んだことのある懐かしい絵本を選んだ。

その足でなつの病室へ急ぐ。



コンコンッ

ノックをしてから入ると、なつは相変わらず辛そうに体を丸めていた。

「なつ、調子どう?さっきから変わらない?」

ベッド横の椅子に腰掛け、なつの汗で額に張り付く髪をそっと避けてやる。

目はトロンとしている、でも苦しいのか眉間は険しくて俺が近付くや否や俺の白衣の裾をキュッと握った。

「もう1回お熱測ろうね。」

体温計を差し込み、熱を測っている間に軽く脈も測っておく。

脈、少し早いな

手もかなり熱いし、またさらに熱が上がったのかも。

そう思っているうちに体温計が鳴り、見ると39.2

やっぱりここまで来ると薬使って熱下げてあげたいな。

でも口にするとなつはきっとまた怯えちゃうから、心の中に留めておいた。

「なつ、体辛いしょ?寝たくても寝れない感じだよね」

そう聞くと、なつは小さくコクリと頷く。

「うん。だと思ってさ、絵本持ってきたんだ。なつは絵本好き?」

そう言って持ってきた絵本を見せてやると、辛そうながらも少しだけなつの表情が明るくなった。

「好きそうでよかった。絵本呼んだら少し眠くなるかなって思ってさ。」

なつが寝やすいように、少しベッドのリクライニングの角度を変え布団を肩の辺りまで掛け直してやる。

そして片手で絵本を持ちもう片手でなつのお腹の当たりを優しくトントンしながら読み聞かせを始めた。