時の止まった世界で君は

なつみちゃんがそう言った直後、病室のドアが開いた。

そこには、少し穏やかな表情になった染谷先生。

「っ…ひろくんっっ」

「……ごめん、俺も少し言い過ぎた。なつこと、置いていったりしないから。そんなに泣くな。」

そう言って染谷先生がなつみちゃんの頭を撫でると、なつみちゃんはワッと泣いて染谷先生にくっつく。

「なつが、検査嫌なのはわかるよ。痛いのは嫌だよね。…でもね、俺はなつのこと心配して検査しようって言ってるんだよ。……それを、バカとかキライとか言われたらどんな気持ちになるかわかる?」

「……かなしくなる…」

「…そうだよね。俺は、怒ってるんじゃないんだよ。ただ、悲しくなっちゃったの。……でも、俺も少し言いすぎた。それは本当にごめんね。なつの嫌な気持ちももう少し考えるべきだったね。」

「……うん、なつもかなしくなった。」

「うん。ごめんね。」

数回のやり取りをして、なつみちゃんは徐々に落ち着きを取り戻し涙も止んでいった。

「…なつ、検査少し痛いけど頑張れる?」

染谷先生は、とても優しく問いかける。

「………やだ…」

やっぱり嫌なものは嫌か…

と思っていると

「……でも、なつ がんばれる…」

そう言ったなつみちゃんは少し涙目だった。

「…よく言った。偉いね、やっぱりなつは偉い子だ。」

染谷先生がなつみちゃんの頭をわしゃわしゃっと撫でると、なつみちゃんはまた少し涙を流す。

「すぐに終わらせてやるから、少しだけ頑張ろうな。」

「……うん」

染谷先生の白衣の裾を握った小さな手は震えていた。