染谷先生の説得の甲斐あってか、なつは染谷先生に抱かれたままではいるものの、布団から出て放射線治療を行う部屋へ向かってくれることになった。

移動中、なつはずっと染谷先生の肩に顔を埋め、先生を強く抱きしめたまま動かない。

先生は、さっき病室でしていたように優しくなつの背中をリズム良く撫でてあげている。

……これまで、もこうしていたのかな。

俺がまだなつを知る前から、なつは病気と闘っていて、そんななつを先生が一番そばで見ていた。

きっと、今日みたいに怖がるなつを励まして説得して、治療に向かっていたんだろう。

今になって、少しだけ不安になった。

果たして俺は、なつにとって染谷先生の代わりとなれる…いや、代わりにはなれなくとも同じレベルの信頼度を置いてもらって、頼ってもらえる医師になれるだろうか。

不安に思っても仕方がないことは承知だ、だからこそこの先生の姿を見て次に繋げたい。

……でも

ここまで完璧な築きあげられてきた絆を見せられると、少し気劣りしてしまう自分がいた。