「……冬希(ふゆき)。今から遊びに行かない?」

僕が部屋でスマホを触ってると、僕の双子の兄、夏希(なつき)が声をかけてきた。

「……うん」

スマホから顔を上げ、僕は夏希を見る。夏希は僕と目を合わせると、ニコリと笑った。

「……はぁ。あんただけは、感情が読み取れんわ……表情からも、声からも」

表情を崩して、夏希はため息を吐く。

「仕方ないでしょ。感情を出せないんだから。夏希みたいに、感情が豊かじゃないの。分かるでしょ」

「……もう少しだけで良いからさ、声に感情乗せてみたら?」

夏希が言った。たまに、夏希には感情がないって言われるんだ。……ロボットみたいだって。

いや、僕にだって感情はある。悲しくなったり、時には泣きたくなる時だってある。でも、それが出せないんだ。泣けなくて、言いたいことも言えなくて、声を出すのも怖くて……。

「それより、どこ行くの」

「どこにしようかな~……人混みの中には行きたくないから、近くの駄菓子屋行こうよ!」

「はは……相変わらず、だね……」

とりあえず、苦笑してみる。上手く笑えてんのかは分からないけど。

「はいはい」

僕は、そう返事をしてカバンを手に取った。