君を呼ぶ声

《真夜中 藍の部屋》

あれから3日ほど経った日の深夜1時
着信からの直留守作動

「聖……」

あ……着信拒否設定するの忘れてた

藍はため息をついた


「……」

え、繋がったまま、無言て

酔ってるの?

そのまま寝ちゃったのかな?

大丈夫かな

まさか気を失ったりとか

まさかまさか、死んだりしてないよね?

あれだけ違うっていったのに

また架けてくるって……

これはもう……警察レベルなんじゃ


恐る恐る電話に出る藍


「もしもし……」


「聖?」


「だから、違いますって。
今、何時だと思ってるんです?
私は“聖さん”じゃないし、この番号は違いますよ」


「ごめん、そっか、俺、また。つい習慣で…。ごめんね、名なしさん」


「え?」


「ちゃんとこないだのこと覚えてるじゃないですか。もしかしてわざと?」


「だったら?」


「切りますよ。もう留守電も入れないでくださいね」


「でも出てくれたね。何で?」


「それは……着拒設定するの忘れてただけで。留守電で無言だったし、ちょっとこないだと様子違ってて……心配になったから」


「心配してくれたんだ。優しいね」


「いや、大変なことになってたら怖いし。
余計なことかもしれませんけど、聖さんのこと本気でお探しなら、警察とか探偵とか、そういうところにお願いした方がいいと思います。そうでないと先に進まないでしょう?」


「先に進まない、か……はは、だね(苦笑)」


えっ……?


「じゃぁ、もう切りますよ」


「待って!!聖じゃないことはもう疑わないから、だからその、名前だけでも聞かせてもらえませんか?」


「しつこいです!!」


「待って!えっと……えっと……じゃぁその俺が五十嵐蓮でも教えてもらえないですか?」


「はぃ!?」


だから何者ですか、イガラシレンて(笑)

検索すれば出てくるの?有名な人?

通話しながら携帯で検索を始める藍

五十嵐蓮

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画像 俳優 新人賞 彼女 最新映画

Wikipediaで丁寧な解説

本名、出身地 出自は一切非公表

15歳でドラマデビュー
主人公の息子役を演じ、その繊細な演技と存在感が話題となる

若干18歳にして映画初主演作「スターライトパレード」で国際映画祭新人賞受賞
ノミネート含め日本人俳優初受賞の快挙

……俳優!?それもなんだかすごい人
授賞式のタキシード姿に凛々しさを覚える
造形の整った顔に涼やかで印象的な目


「キレイ……」


呟く藍


「えっ?何か言いました?」


「えっ、いや、なんでも」


嘘でしょ

いやいや、なりすましの詐欺かも


「もしもし?聞こえてますか?」


「えっと……そっちこそ本物の五十嵐蓮だっていう証拠を!!」


「わかりました。これから俺のInstagramに投稿する内容をこのショートメッセージに先に送ります。通話しながら確認してもらえますか?」


なんでそんな面倒なことに付き合わなきゃ……


「は、い……わかりました」


「じゃぁ今送るからちょっとだけ待ってて」


「は、い……」

~~~~~~~~~~~~~~

久々の投稿になってしまいましたが、

現在、順調に映画撮影中です!


晴天の下、感動した事を皆さんに

一番に伝えたくて、こんな夜中に

投稿してすみません

私の身に起きた奇跡はきっと皆に届きます

日常の中でのひとつひとつの出来事

愛して育むことで何倍にもなっていく、

素敵な輪をもっと広げていければと思います


朝を迎えられることも大きな奇跡

そんなひとつひとつの奇跡に気づき、

自分の中で大切に育てていくこと

そして感謝を忘れずに生きていくこと

自分は表現者として、

出来る限りのことを精一杯やっていこう、

そう改めて気づけた出来事でした

名前の通り、蓮の華のようにおおらかに包み込めるように精進していきます!


皆さんも、日々健やかにお過ごしくださいね


次回作の公式発表、もう少しお待ちください

突然の深夜投稿で、すみません


ご心配なく!!私はとても元気です!!


では、おやすみなさい


五十嵐蓮

~~~~~~~~~~~~~~

本物、らしかった

どうやらこの電話のお相手は

五十嵐蓮という新進気鋭の俳優らしい


「信じてもらえました?」


「いやいや、でも!マネージャーとかスタッフ、乗っ取り?という可能性もあるわけで」


「あはは(笑)疑り深いなぁ。周りのスタッフも人間ですよ?こんな夜中に俺が働いてないのにわざわざ?さすがにもう寝てますよ」


「いや、でも」


「わかりました。
じゃぁもし気が変わったら、ショートメッセージに下の名前だけでも教えてください」


「えっ?」


「だって俺のこと初めて知って怪しんでるでしょう?これからあなたのこと何て呼べばいいかわからないし」


「下の名前だけなら……藍です」


「らん?」


「はい」


「お花の蘭?」


「あ、いや、藍染の藍で、らんです」


「いい名前だね」


「……ありがとう」


「じゃぁこれからは、藍に電話するね」


「え!?」


「またね、おやすみなさい」


「お、おやすみなさい」


それが、五十嵐蓮との始まりだった