「ありがとう、ございます」

 どうしよう、ちょっと泣きそう。そんな風に言ってもらえて嬉しい。

 言葉を詰まらせながらもお礼を言うと、ジョージさんは満足げ。

「家ではリラックスして過ごしてくれ。……それともうひとつ、これは上司として言わせてくれ」

 そう前置きすると、ジョージさんは急に真剣な面持ちを見せた。

「仕事のことではもちろん、人間関係で困ったことがあれば、どんな些細なことでもいいから頼ってくれ。必ず力になるから。……うちの会社では絶対に嫌な思いはさせない」

 ドキッとするようなことを言うと、ジョージさんは続ける。

「悪いが井手との話を聞いた」

 井手君との話って……。もしかして前の勤め先がブラック企業だってことだよね?

 変に気を遣わせてしまったよね。そんなことを偶然にも耳にしたら。

「すみません」

「なぜ謝る? ……大変だったな」

 そう言うとジョージさんは私との距離を縮めた。ゆっくりと顔を上げると、近い距離に彼の整った顔があって息を呑む。