新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

「じゃあ川端の前では取り繕う必要がないな。……本当の俺を知っているのは、陸と彩香だけなんだ」

「えっ?」

 大家さんと金子さんだけ? 家族は?

 思ったことが素直に顔に出たようで、ジョージさんは悲しげに瞳を揺らした。

「常にアラカワ製菓の跡取りとして振る舞うことを強要されてきた。親子といっても、普通の親子らしいことをした記憶がないし、してもらったこともない。だから今も両親に……とくに父親に会うと緊張するんだ」

 自分の両親に会うのが緊張するだなんて……。親とは一番気兼ねなく話せる存在のはず。私がそうだ。

 なにかあったら相談してきたし、弱音も吐いた。なにより一番の理解者だったもの。
 でもジョージさんにとって親は、そういう存在ではないんだ。

 彼の気持ちを思うと切なくなる。

「悪いな、急にこんな話をして。……つまりなにが言いたいかというと、俺がそうであるように川端にも気遣うことなく接してほしいんだ。彩香も同じ気持ちだと思う。陸も自分が気に入った人しか住人として認めてこなかった。俺たちは川端と楽しく暮らしていきたいんだ」

 ジョージさん……。