新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

 大きな決断だった。できることなら次の勤め先が決まってから辞めたかったが、なんせブラック企業。再就職先探しをする暇もなく、毎日働き詰め。

 このままでは、いつまで経ってもこの生活から抜け出せないと思い退職願を出した。

 三年近く働いたんだもの。多少なりとも会社に貢献できていると思っていた。意志は固かったが、引きとめられたらどう断ろうかと頭を悩ませていたが、そんな心配は杞憂だった。

 私の退職願はあっさりと受理されたのだ。送別会もなにもない、虚しい最後となった。
 気心が知れた同僚を作る暇もなく、毎日必死に働いた結果がこれだ。

 だから新しい勤め先では、仕事とプライベートを両立できるような勤務体制で、アフターライフを満喫できる都内にしたい。

 その思いで大手企業の中途採用に果敢にチャレンジした。

「だから第二の人生をスタートさせる気持ちで退職して上京してきたの。無事にこうして入社できて、井手君という頼もしい同期がいて好スタートを切ることができたよ」