新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

 その考えに至ると、勢いよく起き上がり首を左右に振った。

「いやいや、好きになったらだめでしょ!!」

 絶対に叶わない恋なんだから。

 それよりも考えることが他にあるでしょ。大家さんが全力で私の恋を応援してくれている件とか、どうしてジョージさんと金子さんがシェアハウスで暮らしているのかとか。婚約者ならふたりで暮らしていてもおかしくないのに。

 しかしどんなに考えても、その答えが出るわけがない。頭が痛くなってきた。

「だめだ、もう寝よう」

 今日一日で色々なことが起こりすぎて疲れた。

 小説を本棚に戻して電気を消し、ベッドに潜り込んだ。

 瞼を閉じると、疲れているはずなのに今日までの様々な出来事が頭をよぎる。

 せっかくこんな大手の会社に入ることができたんだ。恋にうつつを抜かしている場合じゃないよね。失恋してよかったのかも。

 アラカワ製菓は以前の勤め先のようなところではないと思うけど、まだ入社して一日。これからどうなるかわからない。

 とにかく仕事で失敗しないように気をつけよう。

 次第に睡魔に襲われ、深い眠りに就いた。