新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

「ちょっとまずい気がする」

 実際に私は恋に恋していたと思う。ジョージさんのことなんてなにひとつ知らないのに、運命を感じたとかあり得ないよね。

 それに実際の彼は、思い描いていた人とはちょっぴり違ったもの。
 会社で見る姿が本当のジョージさんではないってことでしょ?

 仕事がデキて優しくて完璧なヒーロー像を抱いていたが、大家さんといるときの、ちょっと毒舌で感情豊かで、それでいて優しい人。それが本当のジョージさんなんだ。

 そのギャップにちょっぴり……ほんとーにちょっとだけ! ときめいちゃったよね、私。
 しかし、名前で呼ぶと頭をポンとされて、優しい顔で見つめられちゃったら、世の女性は誰だってドキッとしちゃうでしょ。

「あんなの、反則だよね」

 仰向けになって小説を胸の上に乗せると、深いため息が漏れる。

 ジョージさんには金子さんという素敵な婚約者がいるのに、これから先も一緒に過ごす時間を重ねていったら、ますます好きになりそうで怖い。

 恋に恋していただけだと思ったのに、会社でも家でも一緒に過ごして、ジョージさんのことをもっと知っていったら、後戻りできないほど好きになってしまいそう。