その後、先に入浴させてもらい、荷解きにとりかかった。必要最低限のものしか持ってきていないものの、終わったのは日付が変わる頃。

「嘘、もうこんな時間?」

 最後に大好きな恋愛小説を本棚に並べていく。

「終わった」

 胸を撫で下ろし、そのままベッドに横たわった。だけどすぐに先ほど並べたばかりの恋愛小説を手に取り見る。

 それはデビュー作で一気にファンになり、新刊が出るたびに購入している小説家、叶(かのう)未来(みらい)先生の最新作。

 大人の純愛を描いた作品で、もう三回も読んでいる。叶先生の描くストーリーは王道だけど、切なくて胸が苦しくなるような展開もあり、恋愛って楽しくて幸せなことばかりではないと教えてくれた。

 でもやっぱり最後はハッピーエンドで、読後感は最高にいい。

「私もこんな恋愛ができると思っていたんだけどな」

 パラパラとページをめくりながら、ポツリと漏れた声。

 両親の勧めで、小学校から大学までずっと女子校育ちだった。友達には恵まれ、楽しい学生ライフを送ることができたが恋愛とは疎遠となり、二十五歳になるというのに恋をしたことがなかった。
 そんなときに出会ったのがジョージさんだった。

 シチュエーションからして、これはもう運命の恋! と盛り上がり、恋に恋していただけだと今日思い知ったわけだけど……。