新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

 せめて「噂はすべて事実とは限らないと思います」と否定することはできる。

 金子さんを悪者のままになどしたくない。だって金子さんは、本当に愛する人と結婚しただけだ。それなのに……っ!

 この話を聞いたら、ジョージさんだってどう思うだろうか。彼の気持ちを思うと胸が張り裂けそう。

 電車に乗り、降りてからも駆け足で会社へと戻った。



「お疲れ様です。戻りました」

 息も途切れ途切れに戻ると、私を見た先輩たちは駆け寄ってきた。

「お疲れ、川端さん。聞いて、大変なの!」

 と井手君から聞いた話をそのまま言われた。

「信じられないよね、新川部長を裏切るなんて」

「婚約までしていたのに、ひどい。新川部長、どんなにつらいか」

 次から次へと金子さんに対する悪い言葉が飛び交う。どうやらみんな、仕事も手につかない様子だ。

 そんなみんなに少しでも冷静になってほしくて、声を上げようとしたとき。

「悪いのは全部俺なんだ」

 大きな声がオフィス内に響き、シンとなる。

 コツコツと革靴で歩く音を鳴らして私の隣に立ったのは、ジョージさんだ。