グルグルと思いを巡らせていると、大家さんは私の背後に回り背中を押した。

「じゃあ戻ろうか。実はジョージが涼ちゃんのためにケーキを買ってきたんだ。ちゃんとした歓迎会は後日やるとして、ささやかな歓迎会をしよう」

「えっ？」

　ケーキって……嘘。新川部長、私のために買ってきてくれたの？

　グイグイと背中を押されて戻ると、新川部長と金子さんがお茶の準備をしてくれていたようで、テーブルの上には紅茶のティ―セットと、ケーキ皿が並べられている。

「あ、話は終わった？　涼ちゃん、ジョージがケーキを買ってきてくれたの。好きなの選んで」

　そう言って駆け寄ってくると、金子さんは私の手を握りテーブルへと向かう。

　そして見せられた箱の中には、おいしそうなケーキが入っていた。

「川端は上司である俺たちが会社でも家でも一緒で嫌かもしれないが、会社を出たら同じシェアハウスの住人として接してくれ。俺もそのつもりで川端に接するから」

「新川部長……」

　思わず見つめてしまうと、途端に彼は顔をしかめた。