早く伝えたいのに、会社からずっと走りっぱなしで、呼吸さえままならない。

 必死に乱れた呼吸を整えていると、先を歩いていた井手が戻ってきた。

「新川部長? どうしてここに……」

 井手もまた突然現れた俺に驚いている。

 少しずつ呼吸も落ち着いてきて、俺は川端の身体を引き寄せた。

「悪いな、井手。お前の恋を応援してやれない。……川端を誰にも渡したくないんだ」

「なに言って……! 金子さんと結婚するんですよね? それなのに、どういうことですか!?」
 声を荒らげる井手には申し訳ないが、今は早く川端に自分の想いを伝えたい。

「それは今度ちゃんと話す。だから川端は連れていく」

 一方的に言い、彼女の手を引いて走り出した。

「ジョージさん、あのっ……!」

「悪いけど離してやらない。逃げないで話を聞いてほしい」

 走りながら切実な思いを口にすると、川端は押し黙る。

 だけど繋いでいる手を振り払うことをせず、ただ俺についてくる。

 会社に戻って車で帰ろうと思ったが、まだ大勢の社員がいるだろう。すぐにタクシーを拾い、先に川端を乗せて俺も乗り込み、シェアハウスの住所を告げるとすぐに走り出す。

 すると川端は今にも泣きそうな声で聞いてきた。