新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~

「金子さんが新川部長を送っていくみたいだし、主役ふたりがいないんじゃ、二次会はないかな。数人でこのあと、飲みに行くみたいだけど川端さんはどうする? 参加するなら、行くやつに伝えておくけど」

「いいえ、私も帰ります」

 ジョージさんが心配だもの。

「了解。じゃあ気をつけて帰って」

「はい、お疲れ様でした」

 先輩は井手君を抱えて店から出ていった。みんなも各々帰り支度をはじめる。
 私もトイレを済ませて先輩たちに帰ると挨拶をしていると、スマホが鳴った。

「お先に失礼します」

 そそくさを店を出て電話の相手を確認すると、金子さんからだった。

 彼女はすでにジョージさんを連れて帰宅した。もう家に着いたのかな。

「もしもし」

『もしもし、涼ちゃん? 今、どこ?』

「えっと、店を出たところですが……」

 通話をしながら最寄り駅へ向かって歩を進めていると、電話越しからは『よかった』という安堵する声が届いた。

『もう帰るところなんだよね? だったら申し訳ないんだけど、ジョージのことをお願いしてもいいかな? まだ店の近くにいるの』

「この近くですか?」

 足を止めて周囲を見回すと、タクシーが一台、路肩に停車している。ゆっくりと近づいていくと後部座席には金子さんの姿があった。こちらに向かって手を振っている。