最後の夏に君に恋する

「本日も、よろしくお願いします」
三年生が来て、部長が挨拶をする。

三年生は4人いて、それぞれの役割がある。
部長は古谷 朱里（ﾌﾙﾀﾆ ｱｶﾘ）。
副部長は波多部 七音（ﾊﾀﾍﾞ ﾅｵ）。
そしてトレーニング係が下原 ニイナ（ｼﾓﾊﾗ ﾆｲﾅ）と私だ。

｢｢よろしくお願いします！｣｣
部長に続いて他の部員も挨拶する。
挨拶は部活の開始時と終了時、休憩の開始時と終了時にする。
顧問の先生がいらっしゃる時は先生に、そうでない時は部長にする。
これが決まりであり、｢当たり前｣の事である。

ここに来て気付いた事だが、｢挨拶｣は何よりも大切だと思う。
基本中の基本であり、当たり前とされる一言の中に沢山の意味が詰め込まれている。
それを分かって言う事で、より真剣な気持ちで何かに取り組む事ができる。

けれど、挨拶が習慣化してくると、その意味を考えずにする者がいる。

現に、部長の朱里もそうだ。
私がなかなか動かない部員たちに対して
『挨拶するよー』
と言っても、朱里と副部長の七音は話しながら移動する。
だらだら話してから、やっとの事で挨拶をする。

こんなのじゃ、ダメだ。
気付いてはいるけれど、私も前まではそうだった。
だから注意できない。
ああ、不甲斐ないな……