最後の夏に君に恋する


給食もあと牛乳だけになり、私はストローをパックの入口にさした。

その時、谷川明輝人が言った。
「誰か、俺の代わりに牛乳返しに行ってくれる人ー。いませんかー?」

これはチャンスだ!と思い、名乗り出ようと思ったが、わざわざ手ぶらで行くのも何か小っ恥ずかしい。
私は手に持っている牛乳を過去最高速度で吸い込む。

間に合え、間に合え!

すると、彼が席に戻ってきた。
見つかったのかと思えば、まだ誰も名乗り出ないらしく、「誰かー」と言いながら歩いている。

席からたち、彼に届くよう、声を上げた。

『あの、良かったら牛乳行くよ。』

けれど、その声はかき消されてしまったらしく、彼の耳には届かない。

やっぱり、辞めようかな。
そう思った時。

彼が私に耳を近づけて、聞き返してくれた。

急上昇する体温と鼓動をききながら、もう一度さっきの言葉を繰り返した。

「マジで?!ありがとう!!」

今度は、届いた。

その後、溢れんばかりの笑顔と感謝の言葉にノックアウトされそうになったのは言うまでもない。