だよね、冬雪?
なんて、人前では絶対剥がさない鉄仮面をどこかに置いてきた流夏の、甘い微笑みが私に向けられた。
「彼女、って……、あはは。うん、冬雪とつきあってるんだっけ、」
一瞬傷ついた表情を見せた割に、愛想笑いをしながら私に鋭い視線が向く。
流夏の甘ったるい笑顔は大歓迎だけど……、何だか可哀想。この場で演技なんてもう必要ないのに。
…そろそろかな。
私の “ 友だち ” は、いなくなる。
「もう、いいよ。…今までありがとう、それなりにたのしかった」
怪我した右手は痛いけど。たのしい思いをしたのは本当。高校生にもなると多少は “ 慣れ ” が生じる。だからせめて寂しくわらってあげた。
「え…、冬雪? どういうこと?」
彼女は意味がわからないと言いたげに首を傾げたけれど、私が言ったことは流夏に向けられたものだと勘違いしたみたい。
頻りに流夏を見つめて、しおらしいふりで鈍感ぶっている。
だから “ もういいよ ” って言ったのに。演技なんてしなくていいって。
「ふふっ」
…知らないでしょ。
私のことも、流夏のことも。なあんにも、知らないでしょ。
わざとらしく斜め下に視線を落とすと、彼の軽やかな笑い声だけが単調にこぼれた。



