何が、 “ あたりまえ ” ?


取り繕ったような返答にありがとうとだけ返して、馴染んだ笑みだけを浮かべる。


でも顔が青いのは、声が震えているのは……、私が怪我をしたからじゃないって、私は知っている。




「どこを、怪我したの? もうすっごく心配したよ。階段から落ちたって聞いた、から、びっくりしちゃった……、大丈夫? 冬雪」




白々しい演技。


演じるなら徹底的にしないと。


名前は忘れたけど……、ねえ、私の “ 友だち ” だって言うなら。


もっとマシな表情、つくってみたらどうなの?




「アンタ、冬雪の友だち?」




引き攣ったような笑顔が、流夏のひとことで剥がれた。




「あ…、えと、そうだよっ」




にっこりとうれしそうな、幸せそうな微笑みに一変させた私の友だちだとかいう彼女は、流夏に見つめられた途端に乙女になる。


鈍い流夏も気づいているくらいにあからさますぎて、反吐が出そう。




「流夏くんも冬雪のお見舞い?」


「そーね。 “ 彼女 ” が怪我したって言うからね、様子見に」