いつの間にか包帯を巻かれた右手。流夏の視線はそれに注がれていて、思わず隠そうと左手を動かす。
「なんで隠すの」
だって。
「流夏が、痛そうな顔するから」
怪我をしているのは私なのに、つらいと言いたげに顔を歪めるのは彼。震える指先が抱きしめるのは、私の肩。
だって。
ねえ。
流夏はいつも、私より苦しそう。
「冬雪、もうやめてよ」
普段眠そうにしている瞳は悲を映して、私の驚いた顔だけを残した。
普段私の名前と適当な相槌しか零さない唇は、弱々しいことばを吐いた。
「俺もう見たくない。こういうの」
私だって、見たくない。
流夏が辛そうにする表情、声、頼りなく触れてくる指先、色のない、瞳。
わかってる。
…わかってるよ。
「冬雪を傷つける “ 友だち ” なんか、必要ないよ」
憎い、って、流夏の瞳がわらう。



