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「冬雪、具合は?」
「へーきだよ、もう、大袈裟」
ぼんやりと漂う薬品の匂い、パリッとした白いシーツ、苦手をぜんぶぜんぶ詰め込んだような部屋。
困ったように顔を覗き込んで笑うのは、幼馴染の流夏。
笑い返すように目を細めると、彼はようやく安堵した様子で私の額をやさしく撫でた。
「保健、室?」
「…そーだよ」
「やだなぁ」
「文句言うくらいなら面倒かけないでよ」
ごめんね。
そういうことばを飲み込んで、彼の名前を呼ぶ。
「ねえ。冬雪、すこしくらい……、やっぱりいい」
不意に目を逸らす流夏の顔が見えなくて、痛む腕を庇いながら上体を起こせば。
いたわるような手が、いつも通り、私の肩を抱きしめた。
「流夏…、」
「ん?」