「慣れてるでしょ」
私だもん。
「冬雪」
か弱くわらうと、流夏は目を伏せて、また私は抱きしめる。
知らない、よ。流夏は。
私の醜い独占欲も、わざとわかりやすい怪我をしたことも、彼女が危害を加えてくるように仕向けたことも。
流夏は知らない。
きっと知れば……、ううん。知ったとしても何も変わらない。
「流夏、私のほうこそごめん」
「謝るくらいなら、もうやめて。友だちが欲しいなら俺がしてあげる」
「なにそれ」
私はもうずっと流夏だけで。
流夏にはきっと、私だけで。
室内でぬくぬくと温めたように育った想いだったらこんなに苦労しないけど、私は些細なことで取りこぼしたくないから。
付け入る隙を与えないくらいに満たして、落として、掬って。
「流夏」
きみもそうであればいいのに。
「流夏は、大丈夫?」



