翌日、私は小さなくぅちゃんを胸ポケットに入れて、学校に向かった。学校までは、歩いて10分。私の学力にピッタリの学校が近所にあったという幸運だ。

1-Aの教室に入ると、みんな、わいわい雑談していた。

「・・・おはよう」

と小さく言うが、誰も気にしない。いつものことだ。

席に着くと、斜め前に座っている吉野茜(よしの あかね)ちゃんが、声をかけてきた。

「ねぇねぇ、昨日、副会長と一緒に帰ってなかった?」

「副会長?」

「生徒会副会長の飯野浩二先輩だよ・・・」

えっ?副会長だったの?

「図書館で一緒になって、それで一緒に・・・」

「つきあってるの?」

「そ、そんなんじゃないよ。初めて一緒に帰ったの」

「気を付けた方がいいよ。飯野先輩、カッコイイからファン多いし、親衛隊もいるくらいだからね」

むくむくっ、と胸のあたりに動きを感じた。だめっ、くぅちゃん。

「高中さんって、話しにくいのかな、って思ったけど、そんなことないね。あたしのこと、茜、って呼んで。私も瑞希って呼ぶから」

「うん、ありがとう、茜」

「瑞希ってどこに住んでるの?」

「ここから歩いて10分くらいのところ。近いんだ」

「いいなぁ・・・あたしなんて、1時間以上かけて通ってるよ」

「今度、遊びに来て」

「うんうん」

1時間目のチャイムが鳴った。1時間目は数学だ。あぁ、数学ってどうも苦手。