黙って俺を好きになれ

目が覚め、どこかの見慣れない黒い天井が真上に見えた。
車に乗っている最中に寝落ちた記憶はある。・・・・・・自分で移動した記憶はないのだから、つまり。運ばれたのだ。

辺りをやんわり包むダウンライトの灯りに、ソファに寝かせられていたのだとようやく状況を理解した。のそのそと起き上がって足を床につけ、取りあえず座り直す。ダッフルコートも着たままブーツだけ脱がされた格好。背もたれにはスーツの上着やシャツが無造作に放られてあった。ぐるりと見渡せば(はり)の感じから、造りはマンションの一室のようだ。

一面の壁にテレビを囲んでウォールシェルフが設えられ、余計な家具は置かれていない。キッチンも冷蔵庫くらいしか見当たらず、生活感がほとんどしない印象だった。 

リビングテーブルの脇に私のバッグも置かれていて、ここは前に言っていた先輩のマンションなのかもしれない。

脱いだコートを畳んでバッグの上に乗せ、窓際に寄ってみた。オリーブ色のカーテンを覗けるくらい横に開いて闇に目を凝らす。バルコニーがある分、距離感がよく分からないけど、それほどの高さじゃないような気もした。

「覗き見が趣味か、お前」

いきなり背中からした声に不格好な悲鳴をあげた私。

「外が見たいなら堂々と見りゃいいだろうが」

クスリ笑いが聞こえ、頭の上を越した腕が遠慮なしにカーテンを開け放つ。一息に広がった夜空。

ぎこちなく振り返ると、バスローブをまとったお風呂上がりの先輩が立っていて。ボディソープなのかメンソール系の爽やかな香りが鼻の奥をすり抜けた。