黙って俺を好きになれ

両親を泣かせて友達にも見向きされなくなる。・・・臆病な私には耐えられそうにない。あの人を好きになって後悔しないって、堂々と言い切れる自信がない。なのに。もし『好きだ』って言われたら自分を止められる自信もない。

滅茶苦茶だ、こんなのは。胸の内で自嘲の笑みを零す。

「誰も許してくれないってどうして?」

梨花がチーズ味のスナックに長い指を伸ばしながら予想通りのことを訊く。私はお腹の底にきゅっと力を込めた。

「梨花は憶えてない?・・・一つ上の先輩で、やくざの家の息子って噂されてた人」

「やくざ?」

驚いた様子でもなく、少し黙ったあとで事もなげに「そう言えば」。

「校長室に父親が乗り込んできた、・・・だっけ。バレー部の先輩から聞いたことあったかな。知らなかった、トーコいつの間に仲良くなったの?」

図書室での経緯を話せば、腑に落ちたような顔で缶のレモンサワーを一口。

「そのコグレ先輩が本当にやくざになってた?」

察しのいい彼女にコクリと頷く。

「・・・いずれはお父さんの跡を継ぐって」

「そっか」

今度はポテトサラダに箸を伸ばし、梨花は短く言っただけだった。