黙って俺を好きになれ

「・・・ダメじゃない、けど」

YESかNOでと言われたら答えは。

「じゃあ決まり」

着ぐるみを脱いだ筒井君は笑い方まで大人びる。

先輩が言った“よそ見”とは違う。言い聞かせる。・・・・・・律儀に言いつけを守ろうとしている自分が少しだけ滑稽に思えなくもない。先輩と私だって恋人じゃないのに。

頭の中でなにかが行ったり来たり。右も左も分からない迷路にはまり込んで立ち往生している自分がいた。

“迷子になりそうだったらボクにSOSちょうだい”

ふいに梨花を思い出した。




明日の時間を約束して、玄関先でふやけた笑顔の筒井君を見送り。部屋着に着替えるとベッドに腰掛けてスマホをじっと見つめる。一瞬ためらって。思いきった。

『・・・トーコ?嬉しいな、ボクに電話くれるなんて』

優しく響いた彼女の声。

「ごめんね梨花、突然」

『ぜんぜん大丈夫だよ。・・・なにかあったの?』

「うん・・・。ちょっと相談ていうか」

『じゃあこれからトーコの部屋に行こうか?確か休みだったよね土日は』

「えっ?うん。でも、梨花の家から遠いし・・・!」

『車出すから高速使えば大したことないかな。その代わり一晩泊めてくれる?』

スマホの向こうで梨花は涼しそうに笑った。