黙って俺を好きになれ

高校2年で図書委員になって。部活動はしてなかった私は本の貸し出し係として昼休みと放課後はほぼ図書室にいた。とくに放課後は利用者がなく、いつも独りテーブルに突っ伏して寝ている男子生徒のことは、少なからず気になっていた。

ブレザーとネクタイの制服は着崩していて耳にはピアス、ツーブロックの髪はトップが金色で、すぐに一学年上の“恐い”先輩だと噂を耳にした。

小暮先輩は17時の閉館時刻になると何も言わなくても勝手に図書室を出て行き、本を借りることもなかったから話す機会はもちろんなかった。

ある日、書棚の整理をしていた私がバランスを崩し、踏み台から落ちたのを真っ先に助け起こしてくれたのが先輩だった。幸い軽い打ち身くらいで大したこともなかったけど、なぜか帰りに先輩が校門で待っていて、私を自転車の後ろに乗せ駅まで送ってくれた。

次に会ったとき、勇気を出して自分から声をかけたのが始まりで。少しずつ距離が縮まっていった。意地悪そうに笑う顔や、苛立ちを隠さない顔、色々な表情も見せてくれるようになって。“図書室のイトコ”なんてあだ名まで付けられた。気が付いたら日課のように放課後は先輩と図書室で過ごし、駅まで一緒に帰る。

・・・あの人が卒業するまで、ただそんな風に一緒にいた。卒業式のあと、図書室は閉まっていたけど、約束してもないのにやっぱり扉の前にいた先輩。『じゃあな』と笑い私の頭をぽんぽん撫でた。

階段を降りていく背中を見送りながらひどく寂しかった。明日から会えなくなる。図書室に来ても先輩はもういない。・・・そう思ったら胸が苦しくなって涙が滲んだ。行かないでほしかった。まだ一緒にいたかった。

そんな欲しがり方が恋だったのだと。