黙って俺を好きになれ

高速道路に乗り、想像していたのは砂浜に打ち寄せては引いていく藍色の波。連れてきてくれたのは、防波堤に打ち付ける波の飛沫が激しくてとても近寄れない、猛々しい冬の荒海。

「やっぱり海ったら、コレっしょーっ」

見かけより男っぽい子だったんだとあらためて見方が変わった。・・・高速も簡単にスピード上げてくし、言葉にするなら“やんちゃ”だ、案外。

水平線の向こうから吹き渡ってくる風の強さで飛ばされそうな勢いに、筒井君が私を手を引いて海を見下ろせる道路脇の歩道を歩いてくれる。

(さむ)ーっっ。でもすげー気持ちよくない?糸子さんっ」

一気に全部を浚ってくれそうな。大地の咆哮のような。・・・風を全身で受けながら、自分の中の迷いごと()がれたいと思った。

筒井君と一緒にいると悩んでいるのが無駄に思えてきそうに、肩の力を抜ける。気がする。

ときどき意地悪に聞こえても裏表がない。思ったことを隠さない、だから気疲れしない。居心地が悪くない。誘われても嫌じゃない。楽しい。

でも。

・・・・・・でも。