黙って俺を好きになれ

道なりで一番最初に出会ったファミリーレストランに車を滑り込ませ、朝食というよりブランチ。私はキャラメルソースがかかったパンケーキ、デミグラスソースのオムライスをオーダーした彼は「ほんとはケチャップ派なんですけどねー」と残念そうに。

里帰りしていた間の話をせがまれたり、独りきりの寂しい正月だったと冗談で恨み言を言われたり。昨夜のことはなかったように、ふやけた笑顔を見せる。何も訊かずに。

それが少し息苦しかった。もし誰と居たのかと問われたら。私はなんて答えるだろう。

「センパイ、それひと口くださいよー」

向かいで大型犬が見えない尻尾を振っていた。まだナイフを入れていない方を切り分け、カトラリーケースから新しいフォークを取り筒井君に手渡そうとすると。

「ハイあーん!」

・・・・・・大型犬が大きいヒナ鳥に早変わりした。さすがに呆れた視線を送ったのにしれっとした23歳男子。

「早くしてくれないとオレがすごくバカに見えちゃいますよー?」

なにか釈然としないまま手にしたフォークでパンケーキを差し、こっちに少し顔を突き出した筒井君の口に運ぶ。

「やってみたかったんですよー、こういうの」

悪気ないこの子のふやけた笑顔にはどうしてか勝てない。一人っ子だから余計に弟的存在に弱いのかもしれない。・・・・・・流されたらキケン。気持ちのヒモを結び直した私だった。