「良かった・・・!帰ってきたぁ・・・っっ」

嘘でしょ。
と思ったのと同時、走り寄ってきた彼に力いっぱい抱き締められていた。

「帰って来なかったらオレ、凍死しちゃうとこだったじゃないですか・・・!」

頬に触れるナイロン地のダウンは冷え切っていて、一体いつからここにいたのかと我に返る。

「筒井君、とにかく中に入って?風邪引いちゃうから・・・!」

私を離した筒井君はニット帽に耳当て、首にはマフラー、手袋もしてそれなりの防寒はしていたけど鼻は真っ赤だし。なんでこんな無謀な真似をしたのかとこっちが泣きそうになった。

「どうして勝手に待ってたの?だいたい来るなら電話してくれれば・・・!」

責めた言い方になったのを、さらにムッとした顔で言い返される。

「スマホの電源切ってたのはセンパイでしょ。あれからすぐに飛んできましたよ、なにが悪いんですか。好きな人が他のヤツにさらわれて、平気でいられる男なんていると思ってんですか?帰って来なかったら一晩中でも待ってるつもりでしたよ、そのまま死んだら化けて出てやるつもりでしたけど、なにか?!」