黙って俺を好きになれ

「・・・とくにこれっていうのは無いですけど、和食系が多いです」

お母さんとよく一緒に台所に立ってた訳でもないのに、食べて育った料理は自然と記憶に刷り込まれているのか、なにかとキンピラや煮物、おひたし、魚・・・はよく食べてるような。

「酒のつまみになるような料理()も少しは憶えておけ。まあ甘党でもねぇが、俺も好き嫌いはない」

・・・・・・それって。私に作ってほしいってこと?  
一瞬、意味が飲み込みきれなかったけど取りあえず頷いておく。

「酒はイケる口か?」

「普段から水分をあまり摂らない体質なので・・・」

お茶もジュースも炭酸もそれほど体が欲しがらなくて、冷蔵庫にはミネラルウォーターのペットボトルくらいしか。アルコールも同じで、エナのペースを見ていて思う。自分は飲めばすぐお腹いっぱいになるのに、普通の人は胃とは別に体内浄化槽でもあるのかと。

事実を言っただけでウケを狙ったつもりもなかったけど、横の先輩が肩を揺らし喉で笑いをくぐもらせてる。

「・・・なるほど、イトコは酔わせて口説けないわけか」

私にそんな面倒なことをしたい人はいません・・・。嘆息。

「俺は飲んでも酔えないクチだ。素面で口説いてるのと変わらないと思え」

人が悪そうに笑んだ気配がした。・・・して。もっと抱き寄せられた弾みに、髪の上から温かい吐息が押し当てられた。

・・・今の?え?、・・・え?、・・・・・・・・・えっ?

落ち着け、私の心臓。きっと先輩は酔ってる。酔ってないフリで酔ってる。・・・はず。