黙って俺を好きになれ

時間制限いっぱいまで堪能し、店を出ると。これから婚約者の彼と会うんだと志保はあっさり解散宣言をした。察するに今日の誘いは、自分の婚約について友人のリアクションが欲しかった・・・というところ。彼女らしい。

ショッピングビルの外で志保の背中を見送ったあと、私は梨花と顔を見合わせる。腕時計を見やれば16時すぎ。もちろんこのまま家に帰ってもかまわない時間ではあるけど。

「トーコはなにか予定ある?」

ふたりで建物の端に避け、梨花が視線を傾げた。無いことを伝えると「じゃあボクとデートしよう」と悪戯気味に笑い、私の手を引き歩道を歩き出す。

本館と別館に分かれた駅ビルまで戻り、初売り初日で賑わう中、ふたりで雑貨店や特設会場を見て回る。自分のペースでって訳にもいかないけど、一人じゃないのも悪くない。筒井君と出かけた誕生日を思い出しながら。

甘いものを食べ過ぎて喉が渇いたと梨花のリクエストで珈琲ショップに入り、カウンター席に横並びで腰掛け彼女はアイスオレ、私はホットのラテで一息ついた。

「志保は相変わらずだったね」

苦笑いを漏らす梨花。

「婚活だのなんだのって気にしなくていいよ? あれって自分の婚約を自慢したかっただけなんだから」

「うん。・・・別に焦ってもないし、そういうのは天の授かりものっていうか」

笑んで見せた。

「トーコはカレシは欲しくない?」

「好きな人ができたら恋人になりたいとは思うけど・・・」

「だよね」

ストローでカップの中の氷を混ぜる仕草。淡い色のネイルを施した指先が大人びてて、志保よりずっと魅力的だと素直に思う。

「梨花は好きな人っている?」

「いるよ」

即答。驚いた。そんな素振りは微塵もなかったから。

「知らなかった。そうだよね・・・、もう24だし好きな人くらいいるよね」

「まあ片思いだからね。そっと見守っててくれると嬉しいな」

私の頭をぽんぽんと撫で、梨花は優しく笑った。