黙って俺を好きになれ

店内に案内された頃にはほぼ満席。時間制限もあって早速、お皿を手にスィーツ選び。タルト、ケーキ、パイ、エクレア、ムースやプディング、ミニサイズだけど種類が豊富で見ているだけでも楽しい。お菓子とオモチャは、時代が変わっても人を喜ばせられる不変のアイテムかもしれない。

ドリンクバーでそれぞれ飲み物を取り、席に戻ると志保主導のお茶会が始まった。最初に私や梨花に近況を尋ね、『あたしなんかさ』が始まると、たいがいそのあとは志保の話が続く。梨花は軽く相槌を打ちながらときどき私に同意を求めて、長くなりそうなのをさらっと切り替えてしまうのが上手だった。

「でね」

愚痴が一区切りしたところで、志保が小さく咳払いをしてあらたまる。

「実は結婚を前提につき合ってる人がいてさ。まだこれからなんだけど、決まったら式に呼ぶから来てよね?」

「そうなんだ、オメデト」

薄く笑った梨花の淡々とした話し方は高校時代から。でもちょっと流したように聞こえたのは気のせい?

「おめでとう志保、良かったね」

私も祝福すると、満面の笑顔で聞いてもいない相手の経歴やスマホに保存された画像まで披露してくれる。

「あんた達もそろそろ真剣に考えたほうがいいよ?あっという間にアラサーになっちゃうんだから!」

「だね」

「梨花は独りでもしっかりしてそうだけど、糸子はそういうタイプじゃないんだし、ちゃんと婚活した方がいいんじゃないの?」

梨花があまり取り合わないのを、矛先がこっちに向いてきた。彼女に悪気がないのは分かってる。純粋に心配してくれてるんだろうけど、押し売りだと気付いてないだけ。

「・・・うん。考えてみるね」

同調してみせれば満足して、今度は婚活詐欺に話が転がる。

「糸子は絶対だまされるタイプだから!」


・・・あのね志保。私はどっちかって言えば、『好きだ』って告白されても信じられないタイプ。人は見た目だけで簡単に判断できる生き物じゃないって。・・・知ってる?