黙って俺を好きになれ

実は、つわりが始まって、両親は一時的な里帰りを提案してくれていた。初めてで大変だろうからと。けれど私の体が心配なのと、私と離れたくないのとで疲弊していく幹さんを見るに忍びなくて。それまでの報告と悩みを梨花に打ち明けたら返事ひとつで、幹さんの留守中は一緒にいてくれると言う。

仕事はパソコン1台で間に合うらしく、私の部屋に梨花用のワークスペースを用意した。空き時間に家事をやっつけてもらったり、具合の悪い私の介抱をしてくれたり。厚意に甘えきりで今に至るというわけなのだ。

そのうえ、幹さんの素性を隠す必要もない梨花にどれだけ助けられてるか。何をどう返したらいいか分からないくらい。幹さんも彼女を気に入っているし、小さな楽園の毎日はとても安らかだ。

「志保には悪いけどそういう訳だから。ボクとトーコは二次会は遠慮させてもらうよ」

『え~?!』『ウソ~っ』と残念そうな悲鳴が上がったところで。お色直しが済んだ主役の再登場を告げるアナウンスに、二人の関心は入り口の扉へとあっさり移り替わったのだった。