黙って俺を好きになれ

分からなくて視線を俯かせるとバツが悪そうに髪を撫でられた。幹さんはそしてどこか悩ましげな息を吐いてから、山脇さんに低く声をかけた。

「車を寄せろ」

やがて減速し、ウィンカーの点滅音と共に車が静止した。何も言われていないのに山脇さんは運転席のドアを開き、無言で外に出た。広めの路肩にでも停車したのかヘッドライトが追い抜いては消えていく。

「目を瞑れ。(じゅう)数えたら開けていい」

二人きりになるなり言い渡されて、寄りかかっていた姿勢を正し瞼を閉じる。子供の頃、お風呂でお湯に浸かりながら百まで数えたのをふと思い出しながら。・・・はーち、きゅう、じゅう。

ゆっくり目を開けて隣りを見上げる。深く、深い色で私を包み込む眼差し。あなたが仄かに笑んだ。

「全く・・・イトコに先を越されるとはな。こういう時は男に花を持たせるもんだろうが」

言って私の左手を取り、薬指の付け根に輪っかがするりと嵌った感触。

幹さんの手が離れてまじまじと。鈍い光りを放つ指輪。流線形に埋め込まれた、三つの宝石(いし)が薄闇の中でひときわ煌めいて。