黙って俺を好きになれ

一点を見つめる筒井君の表情は幽鬼のようで。もう赦してあげて!声にならない声を上げていた。

「堂々と乗り込んできた侠気(おとこぎ)は買ってやる。だが俺には敵わねぇよ。所詮、口先で愛だのを吐き散らすだけの偽物はな」

放たれた言葉が弾丸になって沈黙した筒井君を撃ち抜いていくのを。私はどうすることもできない。

「イトコは連れて行く。・・・憶えておけ、俺が力で捻じ伏せたんじゃねぇぞ。惚れた女に懸ける命を惜しんだのは誰でもない、お前だ」

次の瞬間。破裂音が空気を裂いた。

あさっての方向に伸びた幹さんの腕。
逸れていた照準。
床に両膝を折り放心したままの筒井君。

あっという間だった、残像も残らないほど。でも生きてる。二人とも無事に生きてる。それ以外真っ白で他はなにも考えられない。安堵が広がったと同時、空気が抜けてくように意識が遠のく。ぐにゃりと(かし)いで重力に逆らえずに。

「おい・・・!」

山脇さんの声。強い力で支えられてるのが分かっていても、自分で自分が思うとおりにならなかった。

「イトコ」

幹さんの匂いがした。不意に躰が浮き、抱き上げられた感覚。気怠い瞼を薄く開けると、目を細めたあなたの顔がすぐそこに見えた。