黙って俺を好きになれ

・・・意地悪を足したずるい笑顔だった。矢でも刃でもなかったのに心臓を貫いていった。痕が残りそうに鋭い痛みを連れて。

「青臭ぇな」

自分で答える隙もなく、幹さんが冷笑した気配。
さっきよりもきつく私を腕に閉じ込めて上も向けない。筒井君を振り返ることも。

「どこまで覚悟して言ってやがる。カタギ相手でも事と次第によるぞ?」

本気じゃない。私の気持ちは信じてくれてる・・・!きゅっと目を閉じ耳をそばだてて、全身の神経を集中させる。

「それなりに準備はしてきましたよ。オレが戻れなかったらネットに拡散できるように、とか。糸子さんを取り返すのに手ぶらで来るほどバカじゃないんで」

「正義の味方気取りだな」

幹さんの薄笑いが目に浮かぶよう。

「善悪で片が付くならとっくにこいつは、お前の(もん)だったろうが」

「不良に憧れる女心も分かんなくないですけどねー」

芝居がかって軽かった筒井君の口調が変わった。

「オレを叩き潰す前に、もう一回ここで糸子さんに決めさせてくださいよ。いつ犯罪者か死体になるしかないアンタについてって、1ミリも後悔しないのか。現実がどんだけ甘くねーのか知っててアンタは黙ってんだろ。分かってて連れてくのが本物かよ」