黙って俺を好きになれ

しばらく経って運び入れられた段ボール箱を解き、服、日用品、本も小物もどんどん収納していく。

衣装ケースの中で眠りっぱなしのセーターだとか、何かに使えるかと捨てずに取っておいた諸々(もろもろ)を断捨離したおかげか、かなりスマートに収まった。ウォールシェルフが予想以上に余裕がありすぎで、本を増殖させないよう自分に念じておく。

使い途がなくなった物は運送会社の倉庫で保管してくれると聞き、初めて教えてもらった。KG(ケージー)PORTER(ポーター)は、小型大型の重機も扱う、幹さんが代表を務める会社だった。

テレビではドライバー不足と聞くけど、自社で育成して派遣したり、さまざまな運転免許(ライセンス)の取得費用を補助したり、未経験者向けに門を大きく広げることが人材に事欠かない戦略の一つなんだとか。

『先行投資は博打(ばくち)だからな。どこにいくら賭けるか、勝負に出るのが醍醐味だ』

幹さんらしい言い様だった。でもそれだって一種のビジネスセンスだと思うし、誰にもある才能じゃない。肌で感じた。幹さんが六道会という大きな組織の中で上に立てる器だということも。

・・・ほんの少しだけ心許なさが過った。いつか、違いすぎる水に息が続かなくなりはしないか・・・って。




正午を回った頃には一段落つき、大型冷蔵庫にすでにぎっしり詰まっていた食材で、豚しゃぶを乗せた和風パスタと野菜スープ、簡単ポテトサラダを作った。

リビングの空いたスペースには真新しい四人掛けのダイニングテーブルがセッティングされていて。もし、団欒のひとときを幹さんが思い描いてくれたならひどく幸せだ。二人が本物の家族になる未来だってそう遠くないと期待を膨らせてしまいそうに。

恐る恐る山脇さんもランチに誘えば、宇宙人に遭遇したみたいな表情をされた。幹さんの手前断らなかったのかもしれないけど、ともあれ不揃いのお皿で三人分を並べ幹さんの隣りに腰を下ろす。・・・・・・口に合う?合わない?向かいの彼の反応を盗み見る。まさかの視線が合ってしまい、眉を顰められてはるか彼方まで目を泳がせた。

食事が終わるまで無言を貫かれたものの、綺麗に平らげてくれていた。次の機会も訪れる気がするし、苦手があるのか聞いてみようかな。胸の内で小さく笑みを零した。