ホワイトデーが来る前に、自分で筒井君との区切りをつけるつもりだった。彼が幹さんと相対してもなにも覆ったりしない。私は幹さんのもので、彼がくれる平凡で普通の幸せをこの手に受け取れない。そしてその最後を幹さんが()ぎ払う。

・・・一番見たくないと思っていた光景かもしれない、本心で言えば。落とした視線を上げると、横になっていても凜とした空気を纏うあなたに見据えられていた。

「男を通させろ。・・・いいな?」

二人の矜持を貫かせろ、・・・と。

髪を滑り頬を包んだ大きな掌にすり寄せる。私の務めは見届けて、もう君を振り返らないこと。君の笑顔を忘れないこと。君がくれたものは全部、楽しかった思い出も苦しかった痛みも連れていくこと。

「・・・はい」

刻みながら答えた。私は私の覚悟を胸に。