黙って俺を好きになれ

「イトコ。・・・顔をよく見せろ」

二人の時にだけくれる優しい響きに、きゅうと締め付けられた心臓。

ずっと聞きたかった。名前を呼んでほしかった。枕元に顔を寄せ、伸びかけの髭で少しざらつく頬をそっとなぞる。ぎこちない指先で前髪を梳く。愛しい人の。

目を細めた幹さんが仄かに笑んだ。

「・・・悪かった、一人にして」

途端、胸が詰まって言葉にならなくなった。

人生でこんなに辛かったことだってなかった。どれだけ心配したかと恨み言だってあった。なのにぜんぶ帳消しになった。たとえ手足を失っても。声を、光りを失くしても。生きて戻ってくれればいい。首を横に振るので精一杯だった。

「お前を愛してる・・・」

“赦せ”も、“泣くな”も、“いい子だ”も。その一言にすべて込められていた。お前は俺を愛せるか、と声にならない声を聴く。どんな血を流してもそれが自分の生き様だと。

私の答えを待って深い眸が見つめた。

このさき幹さんの体に残る傷の数だけ、私の涙も半透明の痕を刻んで同じ痛みを味わう。・・・それでも。あなたの腕の中でなら耐えられると思うから。

「・・・私もです・・・」

自分から幹さんの唇に近付いた。できるなら抱き締められたかった。

愛でなければ。もうこの先へは進めない。
幹さんでなければ。私には意味がない。

重ねた吐息の温もりを感じながら強く思った。