黙って俺を好きになれ

感情のもつれで起きる事件をよく耳にする。一瞬で自分と相手の人生を砕いてしまう悲惨さも、極道の世界では単なる“(いさか)い”なんだろうか。・・・棲む水が違うことの意味をひとつ知った気がする。

「・・・こっちはこっちで恩も売れたしな。損にはならねぇ勘定だ・・・最初(はな)から」

幹さんはゆるく息を吐きながら言った。

「来年の今頃は綺麗さっぱり片が付く。晴れてお前は俺の女だ、喜べよ・・・?」

「幹さん・・・・・・」

計算ずくだったようにも聞こえた。まるでそう仕向けたかのような。・・・山脇さんは。幹さんが危ない橋を渡ったのは私のせいだと、本心はもっと咎めたかったのかもしれない。

「山脇。しばらく外せ、・・・誰も入れるな」

「・・・・・・15分だけです」

間があってから冷ややかに言い放つと、警護の人に目配せをして山脇さん達が扉の向こうにいなくなった。