黙って俺を好きになれ

「幹さんッ?!」

前のめりになって幹さんの顔を見つめ、私はただただ必死に呼びかけた。頭を撫でてくれる大きな手をぎゅっと握り込み。

「幹さんっっ、聞こえてるなら起きてください!おねがい、私のところに帰ってきて、どこにも行かないでっ。私の作ったご飯、一緒に食べるんじゃなかったんですか?やっと二人だけの居場所ができるのに、まだ死ねないでしょうっ?先輩ッ、・・・小暮先輩!!」

「・・・・・・・ぇ・・・る・・・」

「?!」

息を呑んで枕元に駆け寄ると薄目が開き、私を探してゆっくり闇色の眸が傾いた。

「イ・・・トコ」

薄めで形のいい唇がそう名前をかたどった瞬間。

顔をくしゃくしゃにして、子供みたいに泣いていた。このまま本当に目を覚まさなかったら。背中合わせの恐怖と絶望が一気に溶けて流れ出した。

言葉なんかで言い尽くせない。あらゆるものに感謝した。なにを代価に悪魔か死神が取引してくれたとしても、かまわなかった。

帰ってきてくれた。
帰ってきてくれた。

「・・・ッ、おかえり、なさ・・・っ」

しゃくり上げながら、やっとそれだけを言えた。

小さく握り返された掌の温もりをもう二度と離したくない。・・・胸に強烈な切なさを刻まれながら。