黙って俺を好きになれ

降りた駅からアパートへと自転車のペダルを懸命にこいだ。冷え冷えとした夜気が躰の芯まで染み透るまえに帰り着きたかった。でないと心を温め直せなくなりそうだった。・・・独りでは。



無性に心細い気持ちを掻き消そうと、わざと賑やかなバラエティ番組にチャンネルを合わせ、ベッドの上で膝を抱え込む。

電車に揺られている間も着地点のない思いがただ渦を巻き、今も宙に浮いたまま。脇に寝かせたスマホの真っ暗な画面をじっと見つめていた。

今まで幹さんに電話をかけたことは一度もない。自分から欲しがるのはワガママに思えた。私の勝手で幹さんを煩わせたくもなかった。

おずおずと手に取り画面に指を滑らせる。誰かと一緒ですぐに出られないかもしれない。用でもないのに、かけ直す時間を割かせてしまうかもしれない。理性と感情がバラバラに作用して、なにに突き動かされているのかさえ自分でも分からない。

タップして画面が切り替わり、スマホは呼び出し音を繰り返す。ただ。声が聴きたくて。息を詰め7コール8コール。・・・耳から離そうとした刹那。

『・・・どうした』

低いあなたの声が届いた。