黙って俺を好きになれ

「意地悪ばっかりのオレのこと嫌いになっていいよ。けど糸子さんがシアワセじゃないなら、とことん嫌われても邪魔する。悪あがきでもナンでも」

憐れみにも慈愛にも映った眼差し。

「好きなだけじゃどうにもなんないことだって・・・世の中にはあるよ」

目の前のキミはひどく大人びて言い切り、「・・・出よっか」とオーダー伝票に手を伸ばした。





私をアパートまで送るつもりでいたのを首を横に振れば、『ホームで見送る』とそれは譲ってくれなかった。

「明日も寒そーだなぁ」

「うん・・・」

「風邪引かないよーに気を付けて帰って」

「・・・うん」

構内アナウンスと共に、重厚な音を響かせながら電車が滑り込んできた。

「糸子さん」

俯かせていた視線を上げ横を仰ぐ。瞬間。引き寄せられて肩ごと抱き竦められた。

「・・・ゴメン」

頭の上で小さく聴こえた。開いた扉から乗客が吐き出され、体が離れる。

「好きだよ」

ふにゃりとした笑い顔に背中をそっと押されるように。私は乗り込む人波に飲まれた。