バレンタインのプレゼントに選んだのは、光の加減で千鳥格子の織り柄が浮かぶ品の良さに引かれ、一目で決めてしまったものだった。

幹さんはいつも仕立てのいいスーツを着ているし、かと言って高級ブランド品に手は届かない。自分で買える範囲の品じゃ釣り合わないかもと不安もあった。

「気に入ってもらえて良かったです」

はにかみ気味に笑む。

「気に入らねぇわけがあるか」

とびきり優しい眼差しに射貫かれ、胸の真ん中が締め付けられるように、きゅっと鳴いた。

「もっと自惚れろ。この俺を骨抜きにした女はお前だけだぞ」

頭の後ろを捕まえられて幹さんの顔が近付く。自分からも寄って自然と唇を重ねた。どちらからともなく何度もそうして、離れがたかった。

「お前に後悔はさせねぇよ。親を泣かせるのもイトコじゃない、俺が背負(しょ)うことだ。・・・見くびるなよ?」

山脇さん(むかえ)の到着を報せる着信に腕を解き、真顔で私を見つめ返したあなたは。揺らぎなくそう言い切ったのだった。