筒井君と結びつけられるとは思ってもなくて。不意を突かれたことに動揺したかもしれない。すっと細まった眼差しに探られている。

「・・・違います」

小さく首を横に振り、白いお皿の上で、粉雪みたいなココアパウダーを降らされたティラミスに落とした視線をおもむろに上げた。

「今は引き継ぎもいませんし、急に転職したら両親も心配すると思うので」

誤魔化しじゃない。それなりにやってきた会社だ、無責任に仕事を放り出したくない気持ちは強かった。裏腹に今すぐにでも筒井君の前から消えたい衝動が奥底で湧き上がっている。そうしないと幹さんの傍にいられない気がする。幹さんを傷付けてしまう気がする。

「命懸けても惜しくない女ほど思い通りにいかねぇな」

小さく息を吐くと、幹さんは苦そうに口の端で笑んだ。

「俺は一秒でも離したくないだけだ、・・・お前を」