到着した先はやっぱり幹さんのマンションだった。エレベーターに乗っている間に何度も深く息を逃した。冷静でいられるよう。・・・間違わないよう。
五階で降り、運転手さんがダブルロックの玄関ドアを開けて入ると真っ暗だった室内が一転した。幹さんはまだ居なかった。・・・息の詰まりそうな緊張が瞬く間に解けていった。
身の置き所もなくソファの脇に立ち尽くす私に、キッチンで何やらしていた運転手さんがつかつかと寄って来て、車を降りた時に手にしていた紙袋を素っ気なく突き出す。
「若が戻るまで好きにしてろ」
「あの・・・っ」
そのまま踵を返し、リビングから出て行きかけの背中に思わず。
足を止めた彼が半身を傾けた。
「ありがとう・・・ございました」
小さくお礼を言うと、訝し気に眉を顰められる。
「・・・何の礼だ」
本来の役割じゃない仕事をさせてしまったことと。
「もしかして心配してくださったのかと思って・・・」
ここに着くまで、それでもなけなしの理性を振り絞って考えていた。身を引けという忠告や、結婚の話は単なる悪意だったかを。もっと辛辣な言い方もできたはずで。何も知らない小娘を哀れんだのかもしれないけど、・・・良心とか優しさを私が信じたかったのかもしれない。
五階で降り、運転手さんがダブルロックの玄関ドアを開けて入ると真っ暗だった室内が一転した。幹さんはまだ居なかった。・・・息の詰まりそうな緊張が瞬く間に解けていった。
身の置き所もなくソファの脇に立ち尽くす私に、キッチンで何やらしていた運転手さんがつかつかと寄って来て、車を降りた時に手にしていた紙袋を素っ気なく突き出す。
「若が戻るまで好きにしてろ」
「あの・・・っ」
そのまま踵を返し、リビングから出て行きかけの背中に思わず。
足を止めた彼が半身を傾けた。
「ありがとう・・・ございました」
小さくお礼を言うと、訝し気に眉を顰められる。
「・・・何の礼だ」
本来の役割じゃない仕事をさせてしまったことと。
「もしかして心配してくださったのかと思って・・・」
ここに着くまで、それでもなけなしの理性を振り絞って考えていた。身を引けという忠告や、結婚の話は単なる悪意だったかを。もっと辛辣な言い方もできたはずで。何も知らない小娘を哀れんだのかもしれないけど、・・・良心とか優しさを私が信じたかったのかもしれない。



