黙って俺を好きになれ

街灯と窓灯り、たまに行き交う車のヘッドライトに照らされる夜道を早足でアパートまで帰ってきて。少し先の路上に黒のセダンが停まっていたのを思わず足が止まった。スモークガラスの度合いといい、幹さんの車・・・ぽい。

もしかして気が付かないうちに着信があったのかと、慌ててバッグを探りスマホを確認する。何もない。・・・違った? 遠巻きにしていたら運転席から黒づくめの男性が下りて来た。

「・・・若に頼まれましたんで、どうぞ」

「えっ?あ、・・・はい」

見下ろされたその威圧感に逆らえずに。

言われたまま遠慮がちに後部シートに収まると外からドアが閉められ、静かに車が発進する。
いつもの運転手さんなのは顔を見て分かった。きっと幹さんの部下だろうと思うのに、部外者の私の送迎までさせるなんて申し訳なさすぎる。・・・というより肩身が狭いです、幹さん。



無口な運転手さんは行き先は告げず、当の幹さんからも連絡はない。ほぼ毒を食らわば皿まで的な心境だ。

わりと大きな道路を走ってしばらく。「お嬢ちゃん」と事務的な声に、ぼんやり外に向けていた意識が運転手さんへと曲げ戻された。

「・・・カタギのお嬢ちゃんが半端に足を突っ込むな」

唐突に話しかけられたことに固まった私にかまわず、淡々と続く。

「若には深入りしねぇ方が身の為だぞ」