黙って俺を好きになれ

あからさまじゃなくても失望と不満の色が見え隠れした。
エナにとって筒井君は大事な後輩で。近くにいる分、彼の努力にまで傷を付けた私の仕打ちを責めたくなっても当然だろうと思う。

謝ればいいのか。弁解すればいいのか。結果が変わらない以上、言える言葉はどこにもなかった。俯くしかない私に「まあしょうがないよねー」と割り切ったような声が聴こえ、視線を上げる。

「筒井がいっくらガンバっても糸子にその気がないんだからー」

諦めに、どこか皮肉を足した笑みを乗せたエナは。何もなかったようにドラマの話を始めると、グラスが空になってもオーダーせずに一時間ちょっとで伝票に手を伸ばした。お店を出て駅に向かう私に変わらなく手を振ってくれたけど、いつものさばけた明るい笑顔とは程遠かった。

・・・月曜には屈託なく笑いかけてくれるだろうか。電車に揺られ、肩を縮こまらせる。一人だけ行き先の違う車両に乗り込んでしまったような孤独感。私はどこに運ばれるの・・・。降りる駅も終着点も分からないで。

ひた寄せる心細さに苛まれながら、ただ。窓の外を流れる闇を見つめるしかなかった。