自分を擁護するつもりはなかった。どんな理屈を並べても。幹さんへの想いに走って筒井君を傷付けた事実に変わりはない。

フォークを置き、テーブルの下で組んだ指にきゅっと力を込めた。

「・・・前に偶然会った先輩なんだけど。また会えて、私も好きになって、・・・それで」

「付き合うんだ?」

結局はそういうことなんだろう。

一瞬ためらってから小さく頷くと。エナは言ったきりトマトクリームソースのニョッキをフォークで掬い続け、口許をナプキンで拭ってようやくエキゾチックな顔立ちをこっちに向けた。

「筒井も糸子が誰を好きになったって文句言えないもんね。それならそれでオメデトウって言うけど」

言葉とは裏腹に冷めた眸が私をじっと捉えて離さない。

「でも最近の筒井、すっごく頑張ってたよ。残業して色んな資料作ったりしてたみたいだし、メンテの保守契約も新規も取れてたし、糸子のこと真面目に考えてるんだぁって感心してた」

彼女が溜め息雑じりに続ける。

「そういう一生懸命なとこ、知りもしないで簡単にフッちゃうってどーなの。もっとちゃんと筒井を見てから決めてもよかったんじゃない?・・・今さらだけど」